2012年7月3日火曜日

はまゆう山荘より

先日、久しぶりに休暇を取って、群馬県高崎市にあるはまゆう山荘に行ってきました。

はまゆう山荘のある場所は、かつて「倉渕村」と呼ばれ、私の住んでいる横須賀市の姉妹都市として、多くの横須賀市民がバカンスを楽しんだ所です(現在、倉渕村は高崎市倉渕町と表記されています)



2006年1月、群馬県で行われた「平成の大合併」により、倉渕村は、箕郷町、群馬町、新町、榛名町、吉井町と共に高崎市に編入したことで、「姉妹都市」の名前こそ外されてしまいました(そのままで良いと思うのですが…(^_^;)) が、現在でも横須賀市民は特典つきで、この施設を活用することが出来ます。



はまゆう山荘の位置する場所は、いわゆる「山荘」のある場所と違い、車やバスで行くことが可能ですが、車を持たない私は、近くの安中榛名まで鉄道を使い、そこまで送迎で来ていただく手段で、何度か宿泊させていただいています。


今回は、はまゆう山荘からお帰りのお客様がいるので、高崎のほうを廻りますから、特別にそちらまでお迎えに行っても良いですよということで、便の良い高崎駅に初めて降りました。

時間になって迎えに来ていただいた方は、はじめてお見かけするスタッフの方ですが、ざっくばらんな肉体労働派タイプのおじさんでした。

高崎駅からは、約一時間あるので、いろんな話をしながら山荘に向かいました。

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はじめに彼が話してくれたのが、この土地にある有名な道祖神のことだったんです。


「道祖神は、見たことがありますか?」

「いえ、何度かこちらに来させていただいたんですけれども、道祖神で有名なことは知ってましたけど、あまり出歩く機会がなくって、まだ見たことがないんです」

彼は、ちょっと遠回りして、村の中に何体もある道祖神の幾つかを、私に見せてくれました。
はじめに見た道祖神は、落合というところにある道祖神で、夫婦神和合の姿の中でもかなりセクシーな姿の道祖神でした。

「こんな姿の道祖神もあるんですね。驚きました」

「これは結構古いほうですけれどね、いろんな形があって、四種類に分けられます。夫婦型と僧形・天孫降臨・それと文字で表される形もありますね」

「…そんなにあるんですか!私の知識では、道祖神とは、夫婦和合の神だと聞いていました。神道の中で、もっとも原初の男と女の神様であられる神漏岐(かむろぎ)・神漏美命(かむろみ)という神様がいらっしゃるんですが、道祖神とはそれを象ったものだと。道祖神好きですよ。自分のうちにお祀りしたいくらいです」

「こちらにはよく来られるんですか?」

「いえ、はまゆう山荘に来るのは、今回で三度目ですが、この周辺はまだまだ知らないことが多いんです」

「ぜひ、お休みの時には来られたほうが良いですよ」
そう言うと、彼はさらに興味深い話を僕にしてくれました。

「私は休みの日になると、あちこち出かけるんです。あちこちと言っても、街の中にはあまり興味がありません。なんというか、広い世界が好きでね。私なんかしょっちゅう車で移動しているから、かえってお客さんみたいに電車なんか乗れないと思う。
僕が休みになると出かけるのは、まぁここも田舎だけれど、もっと田舎。ここから、二時間とか三時間、車を走らせると色々なところに行けるんです」

「あぁ、本当ですね。いい温泉も近いですねぇ。草津も伊香保もある。軽井沢も、この前はじめて行ってきましたけど、色々なところに行けますね」

「このあいだは、郡上八幡に行って来ました」
「郡上八幡!良いですね。あの水のきれいな所ですよね?」

「そうですね。あそこはよかったなぁ…。白山信仰が活発な所でね、おついたち参りがあって、あそこからまた加賀のほうにつながっているんです」
「白山ですか!今年四月に私行って来たばかりですよ」

「白山神社と言えば、この倉渕村にも信仰があるんですよ。あそこから、こちらへ嫁いできた方もいますし」

「へぇ、驚いたなぁ。まさか、白山とこちらがそうやってつながっているとは思いませんでした」
「まぁ、つながっていると言っても、白山神社があるということと、そちらから嫁いでいらした方の話を聞いたことがあるくらいですけどね。
また、あちらで葛飾北斎見てきたけど、はじめて良いとおもったなぁ。北斎なんて、全然いいとおもわなかったけど、あちらに行ったことで考え方が変わりました」

「その土地ならではの、作品を生み出すパワーがあるのかも知れませんね。よく芸術家や作家が、旅をしてインスピレーションを得るなんて言いますが、彼もそうだったのかも知れませんね」

「なるほどねぇ。あとは、巨樹とかね、巨岩を観に行くのも好きですね。特に岩ですね」

 

(榛名神社の御姿岩)

「岩ですか!私、ちょっと興味のある分野ですよ」

「中国であるひとつの石を手に入れてから、はまってしまいましてね、いま考えれば、その時の石はよくあるなんだか分からないような石にすぎないんだけれども、今では300個くらい持ってます」

「300個ですか!」

「そう。前に昇仙峡に行った時に、石の気持ちが分かるって言う人がいたんだけれど、石も抑圧されているから、あまりそれを家に置いておかないほうがいいなんて言われましたけど、今では高じてしまって、家の前に五メートルもある岩(この土地産出の自然石がいくつかあるらしいが、名前は忘れてしまった)が二つも並んでいるんです」

「私の友人にも、クリスタルボウルという石で出来た楽器を操る人がいますよ。彼女も私に必要な石は、向こうからやって来ると言っていました。石ですか、いいご趣味してますね」

「いや…、趣味なんていうもんじゃないですけど。例えばね…、街の中では自分の土地って言ったら、数字で決められているでしょう?ところが、こういうところに住む人間は違うんです。(車を停めて)ちょっとここ見てみてください。大きな岩が二本立っているでしょう。これが狭い所にぽつんと立っていたら、すごく大きいし、邪魔でしかないのだけれど、ここにこうしてあっても、これも五メーターくらいありますけど、それほど大きく感じないんですよね。あっても、景色にとてもあっているし」それで、これを門とみなせば、あちらにある山の景色が、すべて自分の家の庭なんじゃないかと、なんだか自然とそうやって思えてくるんですよね」

「はぁ。…大きいなぁ」


「大きいのが好きなんですよね。ここらへんで、パラグライダーが盛んなんですけど、私も十年くらいやりました。ほら、今、あちらの山の上で、いま降りたでしょう?」

「本当だ!」


「空の上から、この地上を見るとね、人間が開発した土地って、はがれた細胞のように見えるんですよ」


「ふ~ん(感心する)。そうそう、私の知っている巨岩なんですけれど、何年か前、広島に行ったんですよ。日本のピラミッドってご存知ですか?」

「いえ、初耳です」


「エジプトにあるピラミッドが、日本にもあるという学説を発表した酒井勝軍(かつとき)という大正時代の先生がいらしたんですが、広島県にある葦嶽山がそうなんだと言うんです」

「全然知りませんでした。それは本当にピラミッドだったんですか?」


「ピラミッドだという証拠があるんです。近くから見ると、本当にきれいな三角錐の形をしているし、また近くに拝殿やドルメン、太陽石といったものが続々と見つかったんです。確かに自然の山のはずなのに、これは何千年か何万年か前に作られた人工物であるとも言われているんですよ」

「それは知らなかった。今度調べてみますよ。あ、このあたりの景色もね、土地が相まって出来た地形だそうですよ。ほら、ちょうどエベレストが出来たようにね。このあいだ、地質学の先生がいらしてね、そう言っていました…」

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私は、ひさしぶりに人と話していて楽しいと思うことが出来た。

私は、彼がはまゆう山荘のどんなポジションの仕事を担当している方かも聞かなかったし、年齢はもちろんのこと、結局名前も聞かなかった。ふだん、私たちがこちらで重視しているものが、まるで関係なくって、お話しをしていればいるほど、自然と考えさせられたり、思わされたりすることが多々あり、何よりも素朴な人柄と無邪気な人間の「あるべき姿」に心惹かれた。


彼は、仕事は仕事だけれど、仕事に縛られて、石を観に行くことが出来なくなるのは嫌だと言った。はまゆう山荘に車が到着すると、彼は僕にこう言った。

「ありがとうございました。楽しいお話し、また聞かせてください」

(私のほうこそ!である)

そんな彼が、同じスタッフの方から何でも知っているとして尊敬され、ホームページの管理等様々なことが出来て、地元でも色々な活動を行っている知る人ぞ知る知識人であることをあとで知った。

                                              夢千代

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